就学前までの幼児期は子どもが大人の援助を受けながら心身共に著しい発達を遂げる時期です。歩く力についても子どもの運動機能の基盤として育成されていきます。しかし、子どもの見えない、見えにくいという状況は、外界の視覚的空間情報の不足を生じ、危険に対する警戒心を招くことともなり、動きや行動を起こしにくくしてしまいます。さらに人の動作行動を見よう見まねで学び難く、影響を受けることになります。
見えない、見えにくい子どもの幼児期の歩行の目標には、まずひとり歩きができること、そして親しい大人の介添えがあれば安定して歩けることが挙げられます。そのためには音の方向を捉えて、まっすぐによい姿勢を保って歩く力を身に付けることが大切です。自宅などの限られた慣れた場所では早くから探索行動を積み重ね、身体や手で確認しながら空間の中に何が、どのように配置されているかを把握して目的の場所に移動できるようにしていきます。戸外では路面が変わったり、段差や勾配などに対応できたりする力も必要となります。
幼児は心と体を相互に関連させながら成長する時期として歩行の確立への支援にも、歩く形態や技術の取得のみに偏らない全体的な発達の促進が目指されます。介添えをする大人は歩きながら周囲の状況を説明し、子どもは安心して歩く中で自らも自動車などの走行、人とのすれ違い、街の様子等に関心を寄せ、音やにおい、空気の流れなどの環境の把握をし、場所の手がかりを持てるように配慮します。見えない、見えにくい子どもには運動のできる安全な環境作りをして身体全体の運動能力の向上を図りながら歩行の力も養いたいと思います。
〇参考文献
・猪平眞理 編著 『視覚に障害のある乳幼児の育ちを支える』
慶應義塾大学出版会 2018年
・香川邦生 編著 『五訂版 視覚障害教育に携わる方のために』
慶應義塾大学出版会 2016年
〇参考ウェブサイト
全国視覚障害早期教育研究会 http://zensoken.org/contact.html