歩行訓練士とは

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歩行訓練士の仕事とは

「歩行訓練士」について調べると、「目の見えない人や見えにくい人が白杖を使うなどして安全に歩行できるように指導・支援する専門職の通称。点字やパソコンによるコミュニケーションや、調理・掃除・食事など日常生活に必要な動作・技能の指導なども行う。視覚障害生活訓練等指導者。視覚障害生活訓練指導員」(デジタル大辞泉より)と明記されています。つまり、この内容が歩行訓練士の主な仕事になります。
下記に、歩行訓練、コミュニケーション訓練(点字訓練、ICT訓練等)、日常生活訓練について、それぞれ具体的にご説明します。

歩行訓練

歩行訓練士が指導するのは白い杖(白杖:はくじょう)で外を歩く方法が中心ですが、他に人と歩く方法(手引き誘導)、屋内を一人で歩く方法、ロービジョン(弱視者)の方が保有視覚を活用して歩く方法、夜間時に歩く方法等も指導します。視覚以外の感覚(聴覚、触覚、嗅覚等)も活用することで、より安全・確実な移動ができるよう訓練を行います。なお、盲導犬と一緒に歩くときの訓練は、盲導犬訓練士という別の専門職が行います。

コミュニケーション訓練 (点字訓練、ICT訓練等)

点字やパソコン以外にも、最近ではスマートフォンやタブレットの訓練を希望する方が多くなっており、パソコンやスマートフォン、タブレット等の機器の訓練を総称してICT(情報通信技術)訓練と呼んでいます。音声読み上げ機能や画面設定(見やすい画面の色や文字の大きさに変更する)、また便利なソフトやアプリ等が活用できるよう訓練を行うことで、ICT機器は視覚障害者にとって必須の日常生活ツールとなります。

日常生活訓練

見えにくさが生じると、朝起きてから夜寝るまでの生活動作で、それまで何気なく行っていたことができなくなってしまうことが多くあります。例えば、時間の確認や食事の準備、お金や衣服等の管理、掃除や洗濯、化粧等の身だしなみ確認等、様々な困難点が挙げられます。これまで培われた経験や生活技能を活かしつつ、便利な用具や効果的なやり方について紹介し訓練を行うことで、QOLの向上を図ります。

上記以外にも、本人やご家族が困っていることの相談を受けたり、ロービジョン機器(拡大読書器や拡大鏡等)の使用法等の訓練も行います。
 また、地域の施設・団体の紹介、福祉制度や福祉サービス等の情報提供等も行っています。

※歩行訓練士の仕事内容は所属先によって異なる場合があります。お近くの訓練施設等にお問合せください。

歩行訓練とは

視覚障害者・児の歩行訓練って?

足を骨折した、半身がマヒした時のことを想像しませんか。これは動かさないことで弱くなった筋肉をもとの状態になるよう、また脳の病気によって動かすという命令がうまく伝わらないことを反復して練習することによって動けるように、筋力トレーニングや歩行訓練によって、以前の状態に戻す(リハビリテーション)ことをイメージされていると思います。
では視覚障害者・児の歩行訓練とは、見えにくくなった目を見えるようにすること?

人は歩くだけではなく、目的の場所があります。その場所へ行くために足があり、進む、止まる、曲がるなどをして移動していきます。その時に必ず、安全なのか、安心して歩けるのか、どういった方法で行くのか、周りの支援や社会の環境はどうなのか、そして当たり前ですが、皆すべて異なり、同じ方法で歩いてはいないということです。

見る(視覚)以外の感覚というと、聞く(聴覚)、触る(触覚)や匂う(嗅覚)などの感覚、交通ルールや街の環境を知っている知識、歩くという運動、様々な経験(社会性)、そして、移動する安心などを基本として、手足の動かし方や白杖(はくじょう)の使い方、移動する目的地などの地図、移動に伴う周囲の状況、歩くための身体の動かし方、そして何よりその移動にかかわる様々な情報がどのくらい理解(取得)できるのかによって歩くことができます。

さらには生まれながらに見えにくい障害を持った方と、人生の途中で病気や事故などで見えにくくなった方でも大きく異なります。もちろん見えにくい状況の年数でも、年齢によっても様々です。同じ年代でも、例えばタクシーの運転手のかたとIT企業で働いていた方では、経験も全く異なります。道路や街のお店などの知識はおそらくタクシー運転手のほうがIT企業の方より知っていると思います。あの道は時間によって混んでいる、あそこのお店は地元の方に評判、などなど。

見えない、見えにくいということで、できないということではなく、練習を重ねることによって、安心して安全に、もちろん楽しく歩行していただきたいというのが、視覚障害の歩行訓練です。

歩行訓練を受けるには/歩行訓練士がいる機関

全国には、視覚に障害のある方に対し、歩行訓練をはじめとした生活訓練を実施している施設・団体等が多数あります。歩行訓練士の多くは、そうした組織に所属しながら、生活訓練のみならず、見えにくさからくる困りごとに対するご相談への対応や情報提供、必要な支援といった視覚障害リハビリテーションを実施しています。
訓練施設一覧からお住まいの身近な地域にはどんな機関があるか、ご確認ください。

ただし、上のリストにあげられた機関のなかでも、実施主体や経営主体、地域によって利用方法、費用等が異なるので注意が必要です。

実施主体としては、障害者総合支援法上でサービス提供をしている施設、点字図書館・視聴覚障害者情報提供施設、当事者団体、盲導犬協会、民間企業、個人など様々な機関があります。

訓練や支援を受ける方法として、その施設で宿泊をしながら集中的な訓練を受ける「入所」、施設等に定期的に通いながら訓練・支援を受ける「通所」、自宅等に歩行訓練士等に出向いてもらって訓練・支援を受ける「訪問」があります。

入所の場合、実施している施設が全国でも限られており、他都道府県の施設を利用される方もいます。通所の場合、通う日にちや日数が自由に選べる場合や特定の受入日のみ実施している場合などがあります。また、入所や通所のご利用でも、訪問での訓練を受けられる場合もあります。

費用は、入所の場合、施設の利用料と食事代・光熱水費等が発生します。通所や訪問の場合は、一切無料の場合、1回につき一定の利用料が発生する場合、歩行訓練士の交通費のみ発生する場合などがあります。
ご利用の申し込みについて、随時受け付けをしている機関が多いですが、利用手続きに時間がかかる場合、利用者が多い場合に待機になる場合、年度単位(4月開始)で受け付けを行っている場合もあります。

申込方法も施設との契約と市町村窓口での申し込み両方必要な場合、施設で直接相談するだけでよい場合、市町村窓口でのお申し込みなど様々です。

詳細については、リストにあがっているお近くの機関にお気軽にご相談ください。

歩行訓練士になるには

歩行訓練をはじめとする視覚障害リハビリテーション訓練に従事しようとする場合には、養成機関における指導者養成のカリキュラムを履修することが望ましいとされます。

国内に設置されている養成機関としては、大阪市にある社会福祉法人日本ライトハウス養成部と埼玉県所沢市にある国立障害者リハビリテーションセンター学院視覚障害学科が挙げられます。いずれも主に大卒者を対象としており、履修期間は2年間になりますが、日本ライトハウス養成部においては、視覚障害リハビリテーション関連施設の職員を対象に分割履修等の特別措置も設けています。

カリキュラムは、主に福祉・心理・教育・医学について学ぶ基礎科目、ロービジョンや重複障害など視覚障害リハビリテーションに関する専門的な内容について学ぶ専門科目、実技や演習を通じて視覚障害リハビリテーション訓練で提供される技術や指導法について学ぶ実践科目で構成されており、臨床実習や卒業研究まで含めた履修時間の総計は3,000時間に及びます。

実技や演習においては、受講生自らアイマスクやシミュレーションゴーグルを着用して、視機能が低下することによって生じる様々な不安や困難な状況を体験するとともに、後に指導することになる技術や指導法について検証しながら、状況に応じた適切な支援を行うことができるようになるための経験を積み重ねていきます。

なお、養成カリキュラムの受講に際しては、基礎学力や指導者としての資質を確認するための審査があります。また、受講期間中は日々多くの課題や自習に取り組む必要があるため、自ら継続的に粘り強く学ぼうとする姿勢や意欲も求められます。

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